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新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 の感想と、読んだ本の感想を更新しています。

新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第287~293回2019/3/24~3/30 朝日新聞

 後藤さんは、自分の間違いを認めている。後藤さんが、息子将也さんの育て方を正しかったと思い続けているならば、自分のことを「父親失格」だとは言わない。
 後藤さんは、自分の間違いを理解していない。後藤さんが、中学生までの将也さんへの接し方の誤りを理解していたならば、洋一郎にこんな話をしながら、相変わらず息子の自慢をしたりはしないと思う。
 父親としての間違いを認めていながら、どこがどう間違っていたか、をわかっていないから、「さっさと死んでくれと思ってるんじゃないですかねえ」と、息子の気持ちをとらえているのだと感じる。

※入院しているので、手元にあるのは、3月23日の回までです。以降の回はまったく読んでいません。

新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第286回2019/3/23 朝日新聞

 ちょっと待てよ、と思った。むしろ、これはチャンスではないのか?

 後藤さんの息子将也さんからは、相変わらず直接の電話がないようだ。洋一郎は、後藤さんの件を解決するというよりも、後藤さんと息子の将也さんの関係を突き止めたくなっていると思う。


 「これ以上迷惑をかけないように、早く死ななきゃいけないんですけどね‥‥」

 
現実の社会で、こう思っている高齢者は、決して少なくない。
 日本が、治安の安定した豊かな国であるのはある側面でしかない。多くの高齢者がこう感じて、若者もそれを否定できないというのは、世間の在りようとして間違っていると感じる。

新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第285回2019/3/22 朝日新聞

 『剣客商売』の父は、理想の父親だ。そして、今は時代小説の中でしか描けない父と息子の関係だ。息子が「窮地に陥ったところを、さらりと、粋に救う」、こんな父親になれたらどんなにいいだろう。この小説を読んだことはないが、読みたくなる。
 洋一郎と父にはまったく縁のないようなことだが、だからこそ、父はこの小説の主人公である「秋山小兵衛」に憧れをもったのだろうか。
 いったい、石井信也は息子洋一郎にどんな思いを持っていたのか、謎は深まる。一緒にいた頃の息子を「こよなく愛して」いたことは、洋一郎の思い出の断片から察せられるのだが。

新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第284回2019/3/21 朝日新聞

 父にまつわることは、先ずは姉から幾度も聞かされた。父の遺品整理を始めてからは、姉からの情報は途絶えて、最晩年の父の周囲の人々、川端さんや田辺さんから、好印象の老人であったことを聞かされた。更に、神田さんから、まだ若かった父の様子が良いものと悪いものを含めて聞かされ、真知子さんからは、周囲の人々に迷惑をかけていた父の事実が浮かび上が来た。
 だが、父の心情を洋一郎はつかめないままだ。ノブさんとしての生き方だけでなく、父親として別れた子どもたちのことをどう思っていたのか、それが浮かんでこない。それを知る手掛かりが父が遺した本の中にあるのだろうか?

新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第283回2019/3/20 朝日新聞

 石井信也と洋一郎と航太を結ぶ糸が見えてきた。
 洋一郎も航太も金にだらしのないところやギャンブル好きのところはない。だから、この祖父、息子、孫に血のつながりを見つけられなかった。
 航太は職業柄からも文学好きがはっきりしている。洋一郎がすこやか館の図書室を見て回る様子からは、本への愛着を持っていることが感じられる。
 この三代を結ぶものは、本が好きだというところだ。

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