新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第46回2018/7/18 朝日新聞

 洋一郎がやっているいろいろな工夫は、入居者の気持ちに響くものだと思う。
 建物本体と施設設備が完備していることが、老人ホームの価値を決定するものではないだろう。老人ホームにしても、介護施設にしても、最終的にはそこのサービスの質が重要だと思う。そして、そのサービスの質を決定づけるのは、職員、スタッフの意欲次第だ。
 洋一郎のような意欲を持った施設長のいる所は、入居者にとって、よい終の棲家となると感じる。
 だが、老人ホーム、介護施設も企業が経営している組織だ。企業の経営者は、洋一郎の入居者の日常に配慮した運営よりも、コストのかからない運営を求めるのではないか。

新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第45回2018/7/17 朝日新聞

 人は、いつか人生のゴールを自分なりに考えようとすると思う。佐山もその時期を迎えているのであろう。しかし、一人息子に先立たれた境遇にあるとはいいながら、年齢としてはまだ早い。
 やはり、息子のことだけではない何かがありそうだ。

新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第44回2018/7/17 朝日新聞

 私は、幼稚園に行かなかった。私が住んでいた地方では、保育園や幼稚園がまだ一般的でなかった。現代は、幼児が保育園や幼稚園に入るのは当たり前だ。むしろ、入れないことが社会問題となっている。そして、昨今は、老人が専用の制度と施設を何らかの形で利用するのは当たり前になりつつある。
 幼稚園の施設設備が進歩し、個性化もしていると聞く。通園バスのデコレーションを見ても驚かなくなった。裸足で外遊びができることを売りにする園もあると聞く。
 同様に、老人ホームなどには、老人施設なりの特殊性があることがわかる。
 通勤、通学客で満員のバスと同じような路線を、介護施設の送迎車も頻繁に行き来しているのがこの頃の町の風景だ。

新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第43回2018/7/15 朝日新聞

 「サ高住」のことが、はじめて明確にわかった。言葉は知っているし、興味はあるが、具体的にそこに住んでいる人を知らないと、理解はおおざっぱなものになる。同様に、有料老人ホーム、グループホーム、特養、老健などの違いについても、自分のこととして考えなければならない年齢なのに、まだまだ理解は浅い。
 ネットで検索すると、さまざまなサイトで丁寧に解説されている。しかし、ネットや、書籍や、見学説明会で実態をつかめるかというと、はなはだ疑問だ。
 私の場合は、親が施設に入所してみてはじめて実態の一部を知ることができたと思う。
 その結果として、老健もグループホームもその施設の目的や運用の指針と実態とは別物だと感じた。
 最近は、ひとつの企業が、いくつかの高齢者施設を経営していることが多い。そうすると、老健とグループホームと高齢者の入院の多い病院が隣接して同一企業の経営になっていたりする。そうなると、入所者は条件が変わると、隣接の施設に移る場合が多いようだ。また、それぞれの施設には、オプションのように訪問医療が有料で行われることがある。
 そうなると、それぞれの施設の境目が重なり合ってくる。
 実態は、説明通りにはいかないと感じる。

新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第42回2018/7/14 朝日新聞
 
 佐山の理由について考えてみたが、わからない。先に予想してみた40回感想が、どれも当てはまらない気がする。
 佐山夫婦がもし五十代で有料老人ホームに入るとなると、夫婦の自宅や事務所だけでなく、夫婦の両親に関わる物と事のすべてを清算、処分するということになるだろう。佐山の両親と奥さんの仁美さんの両親の事情はどうなっているのだろうか?

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