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新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 の感想と、読んだ本の感想を更新しています。

朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一・作 束妹・画第247回2017/9/10 
 
 いよいよ、俊介の復活劇が始まった。万菊主導ならまだしも、竹野が画策しているとすると、喜久雄はもっともっと追い込まれる。
 徳次が、暴走しなければいいが‥‥

朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一・作 束妹・画第246回2017/9/9

 私と私が招待した客のためだけに、三日間歌舞伎公演をしてくれれば、出演料として借金の額を全部払う。私のためだけに、毎月一時間程度の舞を舞ってくれれば、月々のお弟子や使用人に払う額を毎月払う。だから、喜久雄さんは金のことを考えずに、芸だけに精進なさい。
 ‥‥フィクションの世界はいいなあ。

朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一・作 束妹・画第245回2017/9/6

 たとえ、から元気であろうといつも威勢のいい徳次だが、さすがに煮詰まっているようだ。
 俊介が戻って来て、幸子は喜んだろうし、孫の一豊を見てさらに喜んだと思う。喜久雄も徳次も、俊介との再会に興奮した。しかし、喜久雄がいい役につけない状況に変化はなさそうだ。 
 そして、万菊を驚かせた俊介の化け猫の芸については、喜久雄には一切話されていない。

 もしも、竹野のプラン通りに俊介復活の筋書きがテレビで取り上げられたとしたら、どうなるだろう?恐らくは、喜久雄には何も知らされずに、いきなり番組が放映されるだろう。その番組では、喜久雄は完全な悪役として印象づけられる。視聴者も歌舞伎の関係者も、その番組で描かれていることを事実として受け止める。
 復活した俊介の立場と、見世物小屋で磨いた芸は、世間からも歌舞伎界からも同情とともに絶賛されると思う。

朝日新聞夕刊連載小説・津村記久子作・内巻敦子画『ディス・イズ・ザ・ディ 最終節に向かう22人』第回2017/7/28 第6話 龍宮の友達②

あらすじ
 ある日、細田さんが、睦美に話しかけて来た。細田さんの亡くなった夫の写真が、故郷の夫の弟の所から送られて来たのだと言う。その写真に心当たりのない細田さんは、睦美にその写真を見せてくれた。その写真を見た睦美は、それが熱海龍宮クラブのサポーターたちの写真であることに気づき、細田さんにそのことを伝える。
 夫が生前サッカーの試合を観に行っていたことを知らなかった細田さんは、寝耳に水という様子だった。睦美は、自分が応援している白馬FCと細田さんの夫が応援していたらしい龍宮クラブが最終節で対戦することを、細田さんに伝える。
 睦美は、日芙美を最終節に誘うが、一緒に観戦に行くことを断られる。でも、日芙美も白馬FCの選手には興味を持っているようだった。

感想
 妻には黙って、サッカーの応援に行っていた夫。夫には、言わないでサッカーの応援に行っている妻。
 細田さんは、亡くなった夫の隠された行動を探ろうとするだろう。睦美のサッカー応援はいずれ夫に知られるであろう。
 夫婦の互いのわだかまりが、サッカー観戦、二部リーグのサッカークラブの応援を通して、解消されていくとすると、今までのパターン通りの展開になりそうだ。

朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一・作 束妹・画第244回2017/9/7

その一
 見事な変わりようだなあ。

(略)こちらは明らかに別の女、自分の知らない匂い立つような色気の女(略)

 しかも、その色気が母親としてのものだと描かれている。
 春江は、登場の度に、別の女として現れる。公園の暗がりに立つ少女。喜久雄に寄り添い、刺青の痛みに耐える少女。喜久雄を追って出て来た都会に戸惑う少女。大阪のスナックで故郷の料理を出し、スナックを繁盛させる女。大阪のバーで、人気者となった女。俊介と一緒に行方をくらました女。
 だが、今回の変化が一番大きい。それだけの出来事があったのであろう。

その二

「立派な名前や。……立派なお山さんの名前や」

 喜久雄は、俊介と春江の子を見たとたんに、この子一豊が丹波屋の跡取りだと直感したのだと思う。209回感想231回感想その2から類推した。

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