本屋のとなりは写真館

新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 の感想と、読んだ本の感想を更新しています。

 竹野は、ある程度、俊介と喜久雄の今までの事実を知っているはずだ。だが、それには目をつぶり、喜久雄を、丹波屋を乗っ取った悪役に、俊介を、身を隠して芸を磨いていた丹波屋の正統の後継者に仕立てようとしている。
 では、竹野は悪意の興行師、テレビマンか?そんなことはない。俊介の化け猫の芸を発見したのは、竹野だ。たとえ、化け猫の芸で、歌舞伎の舞台に俊介が復帰しても、竹野の策略がなければ、俊介は歌舞伎愛好家の中で、注目されるだけで終わったであろう。
 それどこか、竹野の悪意の筋書きは、喜久雄にも世間の注目を集めることになると思う。
 竹野は、俊介と喜久雄の救い主になる可能性を感じる。

朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一・作 束妹・画第261回2017/9/25

 喜久雄は、俊介を追い出そうなどと思ったことはなかった。白虎が倒れてからは、必死で丹波屋を支えようとした。病に伏す白虎を実の父のように感じた。白虎が亡くなってからは、いい役もつかなくなり辛い日々を送りながらも、白虎の借金を返すために、どんな仕事でも引き受けた。また、綾乃のことを世間に隠して、独身のような顔をしたことはなかった。
 俊介は、自分が家を出てからの丹波屋の状態を知りながらも、姿を隠したままだった。父白虎が倒れても見舞いもしなかった。白虎が死んでも、葬儀にも現れなかった。
 春江は、喜久雄に自分の気持ちを全く告げずに、俊介と共に行動した。
 これが、事実だ。(※小説の中の)
 テレビの視聴者は、春江の過去と、春江と喜久雄の過去の事実を知ったら、どう思ったろうか。
 世間のゴシップは、事実などどうでもよいのだ。これは、小説の中だけでなく、現実の社会でも当てはまると思う。

朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一・作 束妹・画第260回2017/9/24

 この番組を見たら、私は、喜久雄を悪人と思う。そして、理由もなく嫌い、これからも怪しげなことをする役者だと信じるだろう。
 たとえ、喜久雄の襲名の経緯(いきさつ)や俊介が姿をくらましたことを知っていたとしても、そんなことは、十年前のゴシップに過ぎないのだから。今のゴシップのインパクトに適(かな)うはずがない。

朝日新聞夕刊連載小説・津村記久子作・内巻敦子画『ディス・イズ・ザ・ディ 最終節に向かう22人』第31回2017/8/18 第6話 龍宮の友達④

あらすじ
 隣の席に座り合わせた男性は、細田さんに次のようなことを話した。去年までは、時々一緒に試合を見るおじさんがいて、そのおじさんは、奥さんには、サッカーの試合を観に行っていることを知られるのはなんとなく照れくさい、と言っていた。
 その話を聞いた細田さんは、亡くなった旦那さんの写真をその男性に見せた。男性が話していたおじさんは、その写真の主、細田さんの旦那さんその人だった。
 驚いた初老の男性は、さらに言う。来年は嫁さんを連れてきて、俺に紹介するって言っていたなあ、と。
 最終節の試合で、白馬は負けた。だが、睦美が応援する新垣は得点し、白馬FCは二部に上がってから最高の順位でシーズンを終えた。試合後、白馬の選手たちにゲートフラッグを掲げながら睦美は、家族のことを思い出し、もういい、と思った。

感想
 長年連れ添い、亡くなった夫に対する疑いが、偶然の出来事によって解けた。なんとなく、ホッとさせられる。そして、夫婦の間がうまくいっていてもこういうことはあるのだろうと思わせられる。
 睦美の夫の不倫について、何も解決してはいない。娘の日芙美の不登校はむしろ決定的になった。でも、睦美はそのことに囚われ続ける状態を抜け出したのだろう。
 夫の不倫が決定的になれば、離婚もあるだろう。日芙美は、高校とは別の道を見つけるだろう。そして、睦美は自分の道を進む気持ちになったと思う。

 悩んでばかりいても、しかたがない。熱中できることを見つけ、体を動かし大声でも上げる方がいい。

朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一・作 束妹・画第259回2017/9/23 

 人気商売であるからには、致し方ないことなのだ。
 綾乃と市駒が、役者の家族としての反応をするか、興味が湧く。また、綾乃のこととなると、徳次が出て来るかもしれない。

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