本屋のとなりは写真館

新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 の感想と、読んだ本の感想を更新しています。

 本人はまだ知らぬが、人間国宝に認定され、万座の観客を魅了している喜久雄は、何を見、何を感じているのか? 役者として、完璧な今の自分に満足しているようには感じられないのだが‥‥   共演の京之助が、喜久雄の様子について、一豊に次のように尋ねた。「いや、誰…
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朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一・作 束妹・画第497回2018/5/26 舞台上の喜久雄の至高の芸については、第十九章 錦鯉から本章にかけて綿密に描かれている。 では、役者としての三代目半二郎ではない喜久雄はどうなのであろうか?万菊は、役者ではなくなった時には今ま
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朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一・作 束妹・画第496回2018/5/25 命と引き換えに舞台に上る俊介を支え続けた。俊介亡き後は、一豊を支え、幸子の面倒を見、丹波屋を一人で切り盛りしてきた。一豊が交通事故の加害者となってからは、その荷は重さを増した。 寂しさに浸り
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朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一・作 束妹・画第495回2018/5/24 徳次に、優れた才能はなかった。徳次は、大部屋役者もこなすし、源さんのような付き人もやれた。だが、喜久雄のような芸事の才能も、弁天のような芸人としての才能もなかった。 中国に渡った徳次が成功し
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朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一・作 束妹・画第494回2018/5/23 「お嬢へ天狗より」(489回)のときから、徳次にあえると思った。 期待が裏切られるかもしれない恐さに、徳次が帰って来たに違いないと言い出せなかった。  もう、大丈夫だ。 徳次が帰ってきた。 しか
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朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一・作 束妹・画第493回2018/5/22 喜久雄の初舞台を描いた場面は、印象に残っている。 初舞台のお役がついたと申しましても、栄御前について出る腰元の一人、御前のお供で手持ち灯籠を持って花道から舞台へ出ますと、当然台詞もなく、十五
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朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一・作 束妹・画第492回2018/5/21  矢口建設の若社長夫妻は、歌舞伎を深く理解し、歌舞伎役者を支える本物のご贔屓筋として描かれていた。(352回感想)その夫妻が、紹介したい人と言うからには相当の人物であろう。 竹野は、舞台の歓声と
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朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一・作 束妹・画第491回2018/5/20 喜久雄の役者としての出発点は、大阪で俊介と一緒に稽古に励んでいたときだと思ってきた。 歌舞伎役者の芸として、至高の域に達した阿古屋の舞台を読むと、さらにその先だと思わされる。 それは、喜久雄
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朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一・作 束妹・画第490回2018/5/19 喜久雄の故郷、長崎へと思いが導かれる。 マツも権五郎も、そして、喜久雄も徳次も歌舞伎が好きだった。 権五郎とマツは、貧しく生きるのに精いっぱいの日々を送っていたことが想像できる。厳しく苦しい
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朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一・作 束妹・画第489回2018/5/18 五十年ものあいだ、秘されてきたこの真実が、おそらく今の喜久雄を作り上げたのでございましょう。しかし今その真実を知らされた喜久雄の目に映るのは、なぜか笑いかけてくる徳次の顔なのでございます。(4
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朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一・作 束妹・画第488回2018/5/17 これくらいのことでは、春江は動じない。 幸子は、我が子を押しのけて二代目半二郎の代役を務めた喜久雄の面倒を見た。喜久雄のことを、この男さえいなければ、俊介が辛い目に遭わなくって済んだはずとい
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朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一・作 束妹・画第487回2018/5/16 うまいものだ。どこをどう描けば、この竹野のような登場人物を生みだせるのか。 竹野は、喜久雄に悪辣なことしていた。綾乃の解けることのなかった喜久雄への憎しみも、竹野の画策が原因になっていた。な
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朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一・作 束妹・画第485~486回2018/5/14~5/15 歌舞伎役者として当代随一の位置に君臨する喜久雄が描かれている。そして、その姿が寂しく、痛ましい。 歌舞伎女方の芸術上の価値。その女方としての喜久雄の高度な技法。さらに、歌舞伎役者と
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朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一・作 束妹・画第482~484回2018/5/11~5/13 マツ、幸子、春江、市駒、彰子、この小説は男の物語であると同時に女の物語だ。 登場する男たちは、実生活では、どこか頼りなく、弱い。逆に、登場する女たちは、いずれもしっかりしていて、強
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朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一・作 束妹・画第478~481回2018/5/6~5/10 死を直前にした辻村の告白。 告白を聴いたことと告白の中身は、事実だ。 喜久雄が見ている光景(480回)。 それは、きれいだが、幻だ。「小父さん、もうよかよ。綾乃の言う通り、父親ば殺した
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