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新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 の感想と、読んだ本の感想を更新しています。

新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第267回2019/3/14 朝日新聞

①一人息子を亡くして、五十歳台なのに高齢者施設に入りたい夫婦  佐山夫妻
②一緒に暮らす家族がいず、独り暮らしで死んでいった男性  洋一郎の実の父石井信也
③妻を亡くして独り暮らしになったが、息子に高齢者施設に入れられた男性  後藤さん
④内縁の夫と別れ、シェアーハウスに住む女性  小雪さん
⑤再婚相手の子どもと同居する女性  洋一郎の母  
 五通りの晩年の過ごし方が出てきた。

新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第276回2019/3/13 朝日新聞

 神田さんが知っていたのは、父の一面だけだった。父のことについて、もっと知るためには小雪さんに話を聞くしか方法がない。洋一郎は、こう思ったのだろう。また、小雪さんがシェアハウスで老後を送っていることにも洋一郎は、興味をもっている。
 洋一郎の母より先に小雪さんに遺骨へお参りをさせるのは、筋違いだ。神田さんはこう言うのではないか。

新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第275回2019/3/12 朝日新聞

 洋一郎以外の人は、石井信也の我が子への思いを聞いてしんみりしているが、洋一郎はどうであろう。
私が洋一郎の立場なら、父の気持ちをうれしいとか、生きているうちに父と会えばよかったは素直には思えない。
 父が、別れた家族に会いたかったという気持ちを誰にも言わず、会いたいが会わせる顔がないし、会うべきではないと思っていたとする。私なら、その方が、気持ちが軽くなると感じる。
 死んだ人の言葉や行動をどう受け止めるかは、生きている者の感じ方次第だと思う。死者は、どう受け止められても、それを肯定も否定もできない。
 
 「遺された者に迷惑をかけないように」というフレーズを、最近は盛んに聞くが、私は、この言葉を信じられない。例えば、中途半端な額の財産を遺したがゆえに、遺族がいがみあいになるという例は多い。 
 死ぬときは、何も遺さない、何の遺言もない、これが理想だ。

新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第274回2019/3/11 朝日新聞

 はた目には、円満そうで長年連れ添った夫婦なのだが、夫が亡くなると、妻の方はせいせいした顔になるというのは、よく聞く話だ。その逆もあるのだろう。
 若い頃は人気があり、中高年になってからは人望があったとされる人が、実は、いつも表に出さない不満や憎しみをもって生涯を送ったという逸話を聞いたことがある。
 男と女の関係は、わからぬものだ。
 人の本質は、わからぬものだ。

新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第273回2019/3/10 朝日新聞

 石井信也がここまでやっていたとすると、真知子さんが酔っぱらわなければ言えなかったのがわかる。 
 母が別れたのも、姉が憎むのも無理なかった。実の父はひどい男だった。やっていることは犯罪なのだが、相手が親類や友人やパートナーなので、訴えられなかっただけであろう。
 前回の感想で書いた、石井信也の二面はなぜなのだろう?また、彼は自分史にどんなことを残したかったのだろう?

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