本屋のとなりは写真館

新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 の感想と、読んだ本の感想を更新しています。


 父親失格でない人が、今の世間にいるのだろうか?
 息子を独立した人格として認め、息子の自主性を大事にして息子の個性を伸ばす育て方をする。老いた父は、息子に尊敬されながら息子とは別の暮らしをする。
 そういう父親が父親合格なのか?そんなのは、嘘くさい。
 父親だれしもが、後藤さんの要素を持っていると思う。ただ後藤さんは、息子の学校での成績や就職先、そして自分の会社での位置に重きを置き過ぎている。そこが、つまづきの原因であり、立ち直れない理由だと感じる。

新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第298~302回2019/4/4~4/8 朝日新聞

 後藤さんは、洋一郎に自分の情けない部分を全て打ち明けたと思う。もし、これ以外にもっと何かあったとしても、それは後藤さん自身も気づいていないことであろう。
 息子と奥さんへの虚勢が消えてからの後藤さんの生き方は、父親として失格というだけでなくて、人としての生き方に問題があったと思う。

 後藤さんの過去が明かされても、読者として何かすっきりしない。それは、今までの疑問が消えないからだ。
①後藤さんは、なぜ洋一郎に全てを話したのか?
②今の後藤さんの息子への本心は?
③後藤さんの話を聞き終わった洋一郎の気持ちは?

 息子に賭けた父親の生き方が示されたが、それと洋一郎の父の生き方は違うものとして描かれるのだろうか?

 後藤さんの打ち明け話を聞いている時の洋一郎の冷たい感情が、気になる。後藤さんのことをただの入居者として扱えなかった今までの気持ちと矛盾するように思う。

新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第297回2019/4/3 朝日新聞

 ここまでのことを、洋一郎に打ち明けるのはどんな心境なのか?そして、父親を見限った息子のことを、現在でも自慢し続けるのはどんな心境なのか?
 単なる見栄ではないだろう。そうしなければ、後藤さんは、自分が今、生きている意味を見いだせないのかもしれない。

新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第296回2019/4/2 朝日新聞

 我が子の育て方、親と子の関係、これを間違ったつけは大きい。

 後藤さんは自分の弱さを打ち明けることで、ほんとうは、もっと弱い自分を隠して、ごまかしている。

 洋一郎のこの見方は正しいと思う。もし、後藤さんが、この時に自分の弱さを、妻と息子にすべて晒すことができたなら、現在のような息子との関係にはならないと思う。

新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第295回2019/4/1 朝日新聞

 後藤さんは、息子に自己のすべてを注ぎ込んだ挙句、それが裏切られてどうしようもなくなっていた。 
 息子をまるで、父の所有物のように考えることの間違い、さらに、いつかは息子が父から離れていくことを思わない間違い、これに気づかなかったのが不思議なほどだ。

↑このページのトップヘ