本屋のとなりは写真館

新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 の感想と、読んだ本の感想を更新しています。

新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第274回2019/3/11 朝日新聞

 はた目には、円満そうで長年連れ添った夫婦なのだが、夫が亡くなると、妻の方はせいせいした顔になるというのは、よく聞く話だ。その逆もあるのだろう。
 若い頃は人気があり、中高年になってからは人望があったとされる人が、実は、いつも表に出さない不満や憎しみをもって生涯を送ったという逸話を聞いたことがある。
 男と女の関係は、わからぬものだ。
 人の本質は、わからぬものだ。

新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第273回2019/3/10 朝日新聞

 石井信也がここまでやっていたとすると、真知子さんが酔っぱらわなければ言えなかったのがわかる。 
 母が別れたのも、姉が憎むのも無理なかった。実の父はひどい男だった。やっていることは犯罪なのだが、相手が親類や友人やパートナーなので、訴えられなかっただけであろう。
 前回の感想で書いた、石井信也の二面はなぜなのだろう?また、彼は自分史にどんなことを残したかったのだろう?

新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第272回2019/3/9 朝日新聞

 洋一郎の実の父石井信也のことが、少しずつ少しずつわかってくる。
 最晩年は、それまでの金のトラブルを起こす男という様子がまったくなかった。
 ところが、離婚してから和泉台ハイツに住み始めるまでのことが、神田さんの話と、西条レポートから断片的にわかってきた。
 離婚してからも、金のことで人に迷惑をかけ続けることが、変わらずにあったのが明らかになってきた。
 そうなると、最晩年の周囲の人から好かれる老人と、若い頃の親しくなった人みんなから嫌われる男との間の差があまりに大きい。
 この差はどこから生じたのか?

新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第271回2019/3/8 朝日新聞

 神田と西条真知子、この二人の登場人物は妙だ。
 真知子さんのレポートなるものに、連載の回数を長くかけているが、調査をする動機も調査の結果をどうするかも、読者を納得させて次回を楽しみにさせるような要素に欠けていた。
 これだけ読者を待たせるには、読者をアッといわものが準備されているのであろう。
 私は、別れた妻、洋一郎の母と石井信也は、何回も会っていたというストーリーを予想したが、そんなことはなさそうだ。
 独り身の石井信也が、スナックに通っていたことだけを、真知子さんが話すのに、酒の力を借りなければならないとしたら、これも腑に落ちない。
 このスナックのママと父の関係が、読者を驚かせるようなものなのであろうか?

新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 第270回2019/3/7 朝日新聞

 友だちとしてノブさんのことを懐かしく思い出して、遺骨を借りて海を見に行くのは、神田さんの勝手だ。だが、別れた嫁さんに線香ぐらいあげてもらえ、遺骨を故郷の田舎に帰らせてやれ、などというのは、家族が考えることで、友だちがどうこういうことではない。
 父のことに関心をもち、その死を悼むのは大切なことだと思う。それと、父の死をどのようにとむらうかの行為とは違いがあると思う。
 神田さんは、肉親の死に対する心の持ち方と、慣習的な行為の在り方の双方が混然としている。
 これは、昔の家族の温かみであり、煩わしさでもあると感じる。

このページのトップヘ