本屋のとなりは写真館

朝日新聞連載小説『国宝』『ディス・イズ・ザ・ディ』の毎回ごとの感想と、読んだ本の感想を更新しています。

2016年03月

朝日新聞連載小説『春に散る』沢木耕太郎第343回2016/3/18広岡は、他の三人の気分がいくらか昂揚しているのに気がついていた。 三人はチャンプの家での共同生活で、それぞれが居場所を見つけた。それぞれが、外へ出て自分のしたいことをしている。三人がバラバラに暮らして…
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 働くことに喜びも生きがいも見い出せない。労働は、賃金を得ることが第一義だ。そして、賃金を得なければ生きていけない。どんなにいやでも食うために働き、俸給をもらわねばならない。 夏目漱石は、近代以降の俸給生活者、サラリーマンの姿を描いている。 食うために職…
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朝日新聞連載小説『春に散る』沢木耕太郎第342回2016/3/17 今回も佐瀬に注目した。佐瀬の言葉だけを抜き出してみた。「登ってこい」「どうだ。苦しいだろ」翔吾は佐瀬の言葉に素直にうなずいた。佐瀬も言葉を添えるように言った。「うまいぞ」 佐瀬の言葉は優しい。そして…
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朝日新聞連載小説『春に散る』沢木耕太郎第341回2016/3/16 佐瀬に注目した。 佐瀬の現在の生活の中心は、野菜作りだ。そして、野菜を作る面積を広げ、収穫も増えているだろう。これは、彼が得意とすることだし、チャンプの家でやりたかったことであった。  佐瀬が訪ねて…
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朝日新聞連載小説『春に散る』沢木耕太郎第340回2016/3/15 優れたプレイヤーと、優れたコーチ・トレナーはなかなか一致しない。その両方ができるのは、極めて少数の人だ。 会長だった真田は、プロボクサーの経験はないので、完全にコーチ・トレナー、あるいはボクシングの…
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朝日新聞連載小説『春に散る』沢木耕太郎第339回2016/3/14 どうしてこの四人なのか。 もし、元ボクサーのための老人ホームならば、三人でも十人でも、あるいは一人で初めて、だんだんに共同生活者を増やしていくのでもよかった。また、昔の仲間三人に生活の援助をするため…
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朝日新聞連載小説『春に散る』沢木耕太郎第338回2016/3/13そのとき、広岡の体を戦慄のようなものが走った。 広岡の心が動いている場面は今までにもあった。 偶然テレビで観た試合で、逆転勝利した日本人ボクサーを見たとき。ボクサーのための老人ホームを思い描いたとき。…
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朝日新聞連載小説『春に散る』沢木耕太郎第337回2016/3/12 四人の男たちの暮らしの様子が見えてきておもしろい。 佐瀬が野菜を上手に作るのは想像できるが、私は藤原の意見に賛成だ。家庭菜園が流行りのようになっているが、きれいな菜園作りをしている所は意外に少ない。…
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 胃腸内科で14日間、さらに消化器科内科で11日間の入院生活を過ごした。毎日が検査であった。 転院と言っても、症状も治療もないので次の病院へ行くまでに数日間の猶予をもらって、家で片付けと準備をした。転院をすると、検査は同じものでも繰り返す場合があると聞いてい…
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朝日新聞連載小説『春に散る』沢木耕太郎第336回2016/3/11「これから夕飯の準備をしなければならない」 もっと、本能を捨てたパンチのことを話したいだろうに。 もっと、翔吾が納得したかどうかを聞きたいだろうに。 もっと、翔吾がこれからどうするもりか聞きたいだろう…
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朝日新聞連載小説『春に散る』沢木耕太郎第335回2016/3/10そういい終るか終わらないうちに、広岡がいきなり 広岡の言ったことを翔吾が理解したかどうかを確かめないで、動きでそれを示した。翔吾は、きちんと理解していたことを動作で示している。 教える方と、教わる方の…
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朝日新聞連載小説『春に散る』沢木耕太郎第334回2016/3/9 これは‥‥ 戦いではない。 コーチだ。「よし、今度は本能を捨ててみろ」 これは、右のグラヴで軽く払った。 この動作をするな、ということか? 広岡の生き生きとした動きと、それを見つめる星、藤原、佐瀬の熱…
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朝日新聞連載小説『春に散る』沢木耕太郎第333回2016/3/8 翔吾のことがわかってきた。わかってくると、より訊きたいことが出てくる。それは、バンデージを巻いている今の彼の本心だ。広岡を本気で倒したいと思っているのか?「仁を倒したいと思ったのか」 それを、言ってく…
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朝日新聞連載小説『春に散る』沢木耕太郎第332回2016/3/7 広岡の父は、我が子が幼いときから深くかかわることを避けていた。広岡が野球をすることも、高校、大学へと進学するときも無関心、無干渉だったように見える。広岡は、他に進むべき道を見いだせなかったとはいえ、自…
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朝日新聞連載小説『春に散る』沢木耕太郎第331回2016/3/6 広岡びいきになっているので、そう感じるのかもしれない。しかし、過去の不正なジャッジによって広岡を敗者にした相手に対して、彼は彼なりに悩んでおり、そのことの結果として下降に下降を続けていったのかもしれな…
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