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新聞連載小説『ひこばえ』重松清・作 川上和生・画 の感想と、読んだ本の感想を更新しています。

2016年10月

朝日新聞連載小説『クラウドガール』金原ひとみ第52回2016/10/24

 ママが理有の考えている通りの人だとしても、それにはっきりと気づくには子どもの内は無理だと思う。
 離婚してからのママと杏の行動を考えると、理有は三人の中で自分だけはしっかりしなければと思ったに違いない。

 パパも理有に対して説明するように、ママのことをとらえたのは結婚後のことであるように思う。

「(略)同じ人間の形をしてても全然違う原理で生きてる。ユリカが何を考えていたのかとか、そういうことを考えるのは不毛だよ。ああいう人に対して共感をもって向き合おうとしても無駄なんだ」

このようにママのことを、はじめから思っていたら、結婚はなかったと思う。

 ママ、中城ユリカのような人がいても、そういう人の本質に気づくのは容易ではないはずだ。

朝日新聞連載小説『クラウドガール』金原ひとみ第51回2016/10/23

 理有は、誰を愛し、誰に愛されてきたのだろうか。
 父とフランスにいたときの理有は、父に守られていたと感じているようだ。
 両親の離婚後、母と姉妹の暮らしの中で、理有があんなにがんばったのは、誰のためだったのか。母のためか、妹のためか。それとも自分のためか。

杏はいつも自分のことしか考えていない。自分の快楽のことしか考えていない。そしてその自分は常に誰からも愛されていて、皆が自分の快楽のために奉仕するのが当然だと思っている。

 妹に対して、心からこう思っているなら姉妹が一緒にいる理由は、母のあのことしかないと思う。


 光也を振り切るようにして家に戻った理有には、心の内を見せることができるのは父しかいないように見える。

 光也が怒ったり、誤解したりしていないことだけが救いだ。

 この作者の表現の魅力だ。

え、と声が出て、胸元にじわっと墨汁を垂らされたようなもやもやを感じる。

             
「エッ」とは違う語感。

じわっと もやもや   
感触が伝わる。これも、平仮名がしっくりくる。

墨汁
月並みな比喩なら「インク」だろうが、独特の色彩感を感じる。

朝日新聞連載小説『クラウドガール』金原ひとみ第50回2016/10/22

 人前で、特に杏に見せている理有の冷静さが、表面だけのものであることを感じる。
 理有は、母から抜け出せていない。
 「なんか久しぶりに人の手料理食べて」(48回)と、今まで味わっていなかったものを感じたばかりなのに、母のことを突き付けられてしまった。

 姉妹の母のことが明かされた。中城ユリカ、人気のあった小説家だ。

 それにしても、理有のこの帰り方は光也にも光也の叔母にも不快な思いをさせると思う。光也は、理有が母の話題で激しく動揺したからだと考えるだろうか?

朝日新聞連載小説『クラウドガール』金原ひとみ第49回2016/10/21

 光也の部屋かと思っていたら、喫茶店だった。部屋に行くには、まだ早すぎるか。

 「お姉ちゃんたち」、光也の姉か?しかも一人じゃない。光也は姉と叔母と一緒に暮らしているのか?

 理有が自分の家族について話したときに、光也は、「なんか、前衛的な家庭だね。」(21回)と言っていた。理有は、杏や母のことをどこまで話すことができるのだろうか。

朝日新聞連載小説『クラウドガール』金原ひとみ第48回2016/10/20

 ドラマのあるシーンのような。
 好きになった二人が近づいていくシーン。
 男性が手料理でもてなして、オシャレなシーン。

 引きこもりの過去があり、今でも対人関係苦手の光也。自殺した母のことが常に頭から離れない理有。

朝日新聞連載小説『クラウドガール』金原ひとみ第47回2016/10/19

 女性の感じ方だとつくづく思う。女の子の間でなければ分からないしぐさだろうと思う。

半透明の紫パールのボトルは、幼い頃ママが気まぐれに買ってくれたマニキュアの色によく似ていた。

 ポエムのような散文だなあ。

 理有と光也の間は、一段と接近したようだ。

朝日新聞連載小説『クラウドガール』金原ひとみ第46回2016/10/18

 恋愛の後に結婚し、離婚せずに子どもを育てるというモデルが、私にはあった。両親がまさにモデルだった。モデルがあると、画一的で平凡になるが、敷かれたレールの上を走る安定感があった。

 親の離婚を見ている子どもにとっては、どんなモデルがあるのだろうか。理有はそれを探しているようだ。

 父にまつわる思い出に、理有の心の内が表れていると感じる。

朝日新聞連載小説『クラウドガール』金原ひとみ第45回2016/10/17

 理有がママをそのままにした時のことは、杏の眼からしか書かれていない。
 大学生とはいえ、若い女性が、母を苦しみから救うためには死しかないと即座に考えたのであろうか。そこはまだ描かれていない。
 母親をどう思っているかのヒントがこの回には出ている。

 言う気も言う必要もない。そう言い張る母の無責任さがまかり通ってしまったこと、それだけがあの四人家族が壊れた原因だったのかもしれない。そして私の懸念通り、母はジェットコースターの途中で一人どこかに消えてしまった。

朝日新聞連載小説『クラウドガール』金原ひとみ第45回2016/10/18

 理有が広岡さんのことを、特別な人と感じているらしいことは以前の回の髪をカットしてもらう場面から感じられた。

 会話と様子から、その二人の関係を感じさせるところは、この作者の力量だ。こういう表現が楽しみになってきた。

 この回での、理有の夢の話の話し方がいい。それを受ける広岡さんの動じない様子もいい。

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