朝日新聞連載小説『国宝』吉田修一第15回2017/1/16
舞台の全部が権五郎の妻マツの準備だっとは、予想できなかった。いわれてみれば、芝居好き病膏肓となれば、芝居関係すべてのことに、とことんのめり込むのはそれほど珍しくはない。権五郎も、マツにせがまれて、自分もまんざら嫌いではないのだから、金に糸目をつけずにやらせたのであろう。
だが、いくら凝った趣向であっても、しょせんは素人の集まりの芸であれば、前回14回の舞台と舞の描写は大袈裟だと思う。まして、相手役が全くの素人であったのだから、なおさらそう思える。ここは、作者の筆力にしてやられた。
二代目花井半二郎の思わせぶりの登場は、権五郎に何か頼み事でもあるのかと予想していた。だが、半二郎が、墨染役の息子の喜久雄に、役者としての才能を見出す、という展開なのかもしれない。
舞台の全部が権五郎の妻マツの準備だっとは、予想できなかった。いわれてみれば、芝居好き病膏肓となれば、芝居関係すべてのことに、とことんのめり込むのはそれほど珍しくはない。権五郎も、マツにせがまれて、自分もまんざら嫌いではないのだから、金に糸目をつけずにやらせたのであろう。
だが、いくら凝った趣向であっても、しょせんは素人の集まりの芸であれば、前回14回の舞台と舞の描写は大袈裟だと思う。まして、相手役が全くの素人であったのだから、なおさらそう思える。ここは、作者の筆力にしてやられた。
二代目花井半二郎の思わせぶりの登場は、権五郎に何か頼み事でもあるのかと予想していた。だが、半二郎が、墨染役の息子の喜久雄に、役者としての才能を見出す、という展開なのかもしれない。