原作は読んでいない。ドラマだけの印象だ。ロケを丁寧にやっているし、畑や農作業の場面のカメラワークも気持ちよく観ることができた。展開のテンポも悪くなく、最後まで次回を楽しみにした。  なによりも、今の日本の現実を取り上げているので、私の好きなドラマだった。  見終わって、ややすると、不思議な感覚にとらわれた。例えば、「刑事ドラマ」としながら、主要人物に警察官が出てこないような感じか。  現実の「限界集落」のなによりの特徴は、若い世代がいない、住民が減る一方ということだ。さらには、都会地との日常的な交流が困難な地理的な条件にあることだ。  このドラマの鍵を握るのは、つまり「限界集落」を救うのは、若い世代だ。経営が順調になり出したこの村の「株式会社」を危機に陥れる登場人物でさえ、若い農業従事者だった。そして、登場する高齢の農家さんたちが、高齢といいながら元気に農作業をしている。さらに、この高齢の農家さんたちは、少し考える時間を得ると、新しい価値観を受けいれてそれをどんどんと行動化していく。  なるほど、ドラマだ。  若い世代がいない所に、若い世代の住民を登場させている。若い頃に比べると格段に落ちてくる農作業の能率を、それほど落ちさせない。記憶力や特に新しい事物に対する判断力がなくなってくるはずなのに、それをさせない。都会地との日常的な交流が難しい地理的な位置にあるはずなのに、都会からたくさんの人々が日常的にやってくる。  過疎の集落の現実から見ると、この『限界集落株式会社』に描かれたものは、夢物語以外のなにものでもない。  私は、大都市と言われる地域に住んでいる。  身近では、高齢の一人暮らしの方が亡くなって、その後空き家になる家が増え続けている。限界集落だけではなくて、多くの日本の地域にとって、このドラマは、ドラマそのものなのだ。  今存在するものを、なるべく穏やかで、後始末に困らないように、終わらせること。次には、全く新しいものを作り出していくことが、高齢化、人口減少への現実的な手立てだと、私には思える。