朝日新聞連載小説 『春に散る』 第17回

 倒れて身動きできないでいた「広岡」は、部屋のクリーニングに来た女性に偶然発見されました。
 
 偶然ということをあまり信じていませんでした。偶然に助かったというような経験がなかったせいだと思います。
 ところが、実際に今回の私の病気は偶然に見つかったのです。大腸の検診をしてもらいに受診した病院で、今までの検診ではやらなかった腹部のエコー検査で、すい臓に異常が見つかったのでした。
 これは、かかりつけの医師からも、よく発見されたと言われるほど、偶然性の高いことのようです。

 これだけでなく、今までを振り返って見ると、偶然に起こったことで助かったということはたくさんあるように思えてきました。意図しないできごとで、振り返って見ると、良い方向に進んでいたということはあるものです。逆に、望んで、計画を練って進めたことが、予測と違って悪い方向だったということも少なくありませんでした。
 思うようにならないから、おもしろいとも言えます。