正岡子規の『病床六尺』を読み終えました。
 この作品は、明治35年(1902)に、新聞に連載されていました。今連載を読み続けている夏目漱石の『それから』は、明治42年(1909)に連載されたものが、106年ぶりに再連載されています。3月に読んだ浅田次郎の『赤猫異聞』は、明治時代に活躍している人たちが、江戸から明治にかけての混乱期にあった事件を回想するという設定になっていました。
 たまたまですが、江戸時代から明治時代にかけてが、作品の背景にあるものを読んでいることになりました。
 明治維新というと、いろいろな制度が大変換したととらえていました。しかし、その当時の日本に生きている人々は入れ替わったわけではないのです。多くの人々が、この二つの時代をまたいで生きていたことを改めて思いました。

 姜尚中の『オモニ』を読み始めました。これは、太平洋戦争の前後が小説の背景になっています。第二次世界大戦の前後も、日本は大転換をしたと受け止めています。私たちは、戦後の生まれなので、戦前を生きた人たちに育てられてきたのです。しかし、私自身は太平洋戦争を経験した人たちが、戦中の話や戦後の混乱期について語るのを聞いたことはありますが、戦前のことはあまり聞いたことがありません。
 人々が、そして、一人の人がそれもごく普通の生活を送っていた人が、戦前の生き方を、戦後どう変化させたのかに興味を感じます。そして、変化させずに残り続けたものもきっとあるのだろうとも思います。