朝日新聞連載小説『それから』夏目漱石第54回

「代助」は、「三千代」の前ではごく平凡な男の感覚になってしまうように描かれている。自分の使ったコップを「三千代」が使おうとすることに戸惑う。婆さんがいないと、自分ではコップの場所が分からずあたふたしている。
 一方「三千代」は、ずいぶんと奔放な行動を見せている。鈴蘭の漬けてあった鉢の水を飲むところなどは、読者としてもびっくりさせられる。
 コップを置いて部屋を出て行く、などの部分に、この小説の設定が細やかであることを感じる。