朝日新聞連載小説『春に散る』沢木耕太郎第81回2015/6/22

 ボクサーとしての希望が叶わなかった「広岡」だが、今はアメリカの実業の世界でそれなりの地位にいる。現に日本に帰ってきても生活に困る様子はない。更に、ボクサーを諦めた理由は病気によるものだ。普通なら刑務所に収監されている昔なじみに対して、同情と意識しなくても優越感をもつはずだと思う。ところが、「広岡」からはそのような感じを受けない。
 もしも、「たいへんだな」の言葉を呑み込まなければ、「藤原」の方がそれを感じたかもしれない。

 日本に帰ってからの主人公に、命に関わるような病気に罹っている様子が出てこないが、そのことは今後どうなっていくのだろうか。