朝日新聞連載小説『春に散る』沢木耕太郎第85回2015/6/26

 話す内に、「広岡」と「藤原」の別々に過ごした時間が浮かび上がって来た。そして、ボクサー仲間の新たな名前も出て来た。
 「広岡」の心残りは、他の2人を含めたボクサー時代の仲間に関わることのようだ。 
 
 刑務所にいて健康になったという「藤岡」の話がおもしろかった。これは、今の日本の社会の一端を切り取っている。今はこれだけ食物に恵まれているのに、三食をきちんと食べる生活を送るのは難しい。仕事の時間と昼夜を問わない時間の使い方が、生活の基本的なリズムを崩している。
 定時勤務の定職に就いていた私でも、三食を毎日ゆっくりと食べるようになったのは退職後のことだ。