朝日新聞連載小説『春に散る』沢木耕太郎第87回2015/6/28

あまり順調な人生を送っていないのではないかと思っていたが
 
 「広岡」と「藤原」は、「順調な人生」どころか、「夢破れた人生」「家族もなく、住む所さえ安定しない人生」を送って来た。
 では、「順調な人生」とはどんな人生か。
 「困難を一歩一歩解決し、夢を実現した人生」「堅実な職業に就き、安定した収入と円満な家庭を得た人生」のようなことが「順調な人生」なのだろう。それにしても、どうも表面的なことばかりのような気もする。

 沢木耕太郎は、「幸福な人生」と書いてはいない。「順調な人生」は、「幸福な人生」と違うという気がして来た。
 作者のこのような言葉への感覚に、魅力を感じる。