朝日新聞連載小説『春に散る』沢木耕太郎第92回2015/7/3

 ボクサー仲間の二人目となる「佐瀬」と言う人物の名が出てきた。彼は、今は実家に戻り農業をやっているらしい。
 「広岡」は、仲間だった「藤原」が刑務所を出たら、一緒に暮らすつもりのようだ。
 「佐瀬」は、どんな境遇なのか。そして、「広岡」とどう関係して来るのか。
 新しくもう一人、いや、一匹の動物が登場しそうだ。それは、子猫だ。

 飼い犬や飼い猫のことを表す言葉は、「ペット」がすっかり定着している。私は、自分が飼った犬と猫を「ペット」とは呼ばない。そうしないと通じない場合にだけ、「ペット」という言葉を我慢して使う。我が家の犬と猫を「ペット」と考えるのが、どうにもしっくり来ないからだ。
 だからと言って、「愛玩動物」というのも何だか堅苦しい。「愛犬」「愛猫」と言うほど大切にしていない。欧米と日本では、犬、猫の飼い方に、違いがあると以前から思っている。

 「広岡」は、ペットを飼おうとしているのではないと思う。