朝日新聞連載小説『それから』夏目漱石第73回2015/7/15

 「代助」は、「父」に共感することも同意することもできない。そして、「父」よりも自分の方が理屈にかなっていると確信している。
 ところが、理屈で「父」を説き伏せることは不可能だと、結論づけている。
 「代助」は、「父」が勧めることに従うことはできない。従わないだけでなく、話し合って妥協点を見つけることさえもできない。そう考えると、「父」との「絶縁」しか残された道はない。
 そして、その「絶縁」を避けようという気持ちはそれほど強くないようだ。
 親子の「絶縁」は、「苦痛」ではないが、そうすると、経済的な援助がなくなる。これは、「代助」には是非とも避けたいことだ。
 要するに、親の口出しはいらないが、親の金は欲しい、ということだろう。

 こういう親子間の軋轢は、現代にも無数にあると感じた。
 明治、大正、昭和、平成、時代が進むに連れて、顕在化する親子の関係を、既に描いているということなのだろうか。