朝日新聞連載小説『それから』夏目漱石第76回2015/7/20

 「代助」は、「三千代」を「気の毒に思った。」と改めて自覚している。「気の毒に思った。」と4回重ねて書かれている。
 結婚する前の「三千代」を好きだった。しかし、友人と彼女の結婚を止めることはしなかった。
 今、彼女に感じている愛情は、彼女が辛い結婚生活を送っているからこそのものだと自覚している。

 「代助」は世の中の習慣や道徳に縛られることなく、自己の感性に従って行動する人物だ。だが、感情のままに行動してはばからない人物ではない。感情に従うが、その感情がどこから湧き上がるかを、理性で突き止めなければすまないのだ。