朝日新聞連載小説『それから』夏目漱石第74回2015/7/23

彼は平岡夫婦を三年前の夫婦にして、それを便に、自分を三千代から永く振り放そうとする最後の試みを、半ば無意識的に遣っただけであった。

 「三千代」の夫婦生活が安定すれば、「代助」の彼女への愛が今以上には進まなくなる。
 「代助」は、「三千代」の「代助」への気持ちを分かっているし、友人の妻であることを制約とは見ていない。
 それなのに、「三千代」との関係を今以上に深めたくはない。それは、自分をやっかいな立場に追い込みたくないからだ、と感じる。