朝日新聞連載小説『春に散る』沢木耕太郎第112回2015/7/24

 久しぶりに若い頃の仲間と会えば、過去に一気に戻ろうとする。しかし、会わなかった互いの時間を埋めるのは難しい。

 夢破れたら、人はどうするのか。
 全てのことに無気力になり、自暴自棄な暮らし方をする人もいる。次の夢を持ち、次々と夢を持ち続ける人もいる。夢を持つことを止め、それでも無気力にもならず平凡に暮らす人もいる。
 「佐瀬」の場合は、二度目の夢は実現の手がかりをつかんだが、それを発展させることができなかった。ボクサーとして世界チャンピオンになる夢と、自分のボクシングジムで優秀なボクサーを育てる夢、その両方とも実現にこぎ着けることができなかったようだ。