朝日新聞連載小説『春に散る』沢木耕太郎第117回2015/7/29  

 縮こまっていた心が、解けていく瞬間が描かれていた。

「俺は、何ももてなすことができない。おまえをここに泊めたいが泊められない。まともな布団の一組もない……」

 「佐瀬」は生活に困っていることを愚痴っているのではなく、昔の仲間に茶の一杯も出せない自分の不甲斐なさを悲しんでいると感じる。
 そして、「広岡」は、ジムの時代から仲間を思う気持ちを持っていた男だったのではないか。