朝日新聞連載小説『春に散る』沢木耕太郎第130回2015/8/11 

 作者は、今までも何回か「広岡」の視点を通して、今の日本の独自な文化を取り上げている。これが、私にはおもしろい。
 今回取り上げられている事も大変に興味深かった。また、指摘されてみるとなるほどと思わせられる事だ。

 日本独自の文化は、伝統的なものもあるが、今創り出しているものもある。そして、私たちが直接関わっていけることは、今のものだと思う。
 例えば、伝統的な和食だけでなく、カップ麵やハンバーグやレトルトカレーなどをも含めた現代の日本の家庭料理などは日本の文化だと思う。昼食がカップ麵でも、夕食にはご飯と味噌汁と手作りのハンバーグが並べば、それはもう日本の食の独自性だ。
 また、世界に通用するものと考えていてはだめだと思う。だいたいが、世界に通用するものと言ってもこれだけ多様な世界に共通に理解され、歓迎されるものがあるはずがない。
 今、海外から日本に来た観光客が、大量に買っていく物も海外の人向けに企画された物ではなさそうだ。
 日本人が使いやすいように工夫して製造している物が、実は海外の人にとって欲しい物だったという構造になっているように思う。

 過去の感覚だけで日本の文化を捉えずに、海外の人の今の反応を知ることが、日本を正しく理解することにつながる。
 また、外国で儲かりそうな物や外国に売り込めそうな事だけを狙ってはだめだ。
 作者の見方から、こんな事を感じた。