朝日新聞連載小説『それから』夏目漱石第103回2015/8/27

 相反することのどちらを選択するか、迷った場合に、いつまでもぐずぐずしないで、どこかで決断すべきだ。
 困難な何かを進めるには、到達すべき目標と、そこたどり着くための計画を立てるべきだ。
 これは私の価値観であり、私と同世代の良識でもあるだろう。

 「代助」は、どこまでも優柔不断だ。
 「父」の援助が途絶える道を決断したのに、兄嫁からの援助を喜んでいる。「三千代」の夫と会う算段をしたのに、どう話を進め、どんな決着をつけようという計画を持たない。
 そんな主人公に共感できなかった。
 
 しかし、今は違ってきた。

 迷っていないで、決断する。一度決断したら、その思いを曲げずに行動する。
 難しいことを成し遂げるには、明確な目標と計画を立てる。一度それを掲げたら、どんな障害があっても計画通りに進める。
 これは大切なことだと思う。

 だが、どんな場合もこれでよいのか。こういう考え方で、どんな時代でも人間関係は成り立つのか。

 どこまで考えても決断できないこともある。一度決めたことなのにまた迷うこともある。相手の出方次第でこちらが変わっていくこともある。むしろ、その方が、自然なのではないか。

 煮え切らない態度のままで、「平岡」に会うことを考えて、眠れないでいる「代助」に、人間味を感じる。