朝日新聞連載小説『春に散る』沢木耕太郎第148回2015/8/30

 「それはすばらしい考えですね。」というような肯定的な言葉を言わなかった。「佳菜子」は、どこまでも注意深く相手の話の意味を聴き取ろうとしている。
 だから、その姿勢に導かれて、「広岡」の考えも具体的になっていく。
 将来はどうであれ、「広岡」が今住んでいるアパートに、昔の友人たちを迎えるとなると、彼女の力がますます必要になるだろう。


佳菜子は、刑務所とか出所とかいう言葉にも特別な反応を示したりせず

 平凡な育ち方をしていれば、こういう反応にはならないと思うが…