朝日新聞連載小説『春に散る』沢木耕太郎第152回2015/9/3

 4階建てのビルの2~4階にスナック、居酒屋、1階にラーメン屋、寿司屋がびっしりと並んでいる。どの店も小さいが客はそれなりにいる。名前の変わる店はあるが、空き店舗は出ない。
 スナックが減り、お好み焼き屋、弁当屋が増える。
 たまにスナックに行くと、次の客が来るまで店を出ることができないほど客がいなくなる。
 テナント募集の張り紙が目立つようになる。
 ついにビル全体がガランとして、廃墟のようになった。
 この30年間のどこにでもある移り変わりだ。「水商売」だから仕方がないか。昔は、堅実といわれていた業種も今は、当てにはならないようだが。

 ますますよくない予感が…