朝日新聞連載小説『それから』夏目漱石第109回2015/9/4

  「代助」が価値を認めない物事に、価値をおくと「平岡」がとった行動になるのではないか。
 世間で幅を利かせる富と地位を得ることを目的にして、世間体を気にしながら生きるのが、「平岡」であろう。そういう考え方に立つと、「代助」の「父」に苦情を訴えることは当たり前になるのだろう。そして、それが、「代助」に打撃に与える最も効果的な方法だと考えつきそうだ。

 一人の人間を、個人として見るか、家と地域社会と国家の一員として見るか、その違いが浮かび上がってきたと感じた。

 「代助」は、彼と「三千代」との愛を、彼だけに責任のある問題としかとらえなかった。しかし、世の中の人々は、世間の一員であり、家の一人である「代助」が引き起こした破廉恥な事件ととらえることになるのだろう。