朝日新聞連載小説『門』夏目漱石第1回2015/9/21

 同じ二人でも、恋人同士と夫婦の会話ではどこか違う。
 どこが違うのか。そして、それはなぜなのか。

「おい、好い天気だな」と話し掛けた。細君は、
「ええ」といったなりであった。

 仲の良い夫婦でも、そうではない夫婦でも日常の会話はする。上の会話のような意味のなさそうな言葉のやり取りも、仲のよい夫婦の場合はどこか違っている。
 愛し合っている夫婦は、互いの気持ちを察し、穏やかに言葉を交わし合うのだろう。
 でも、そんな分かり切ったことだけではないのかもしれない。