朝日新聞連載小説『門』夏目漱石第4回2015/9/24

 明治時代の休日の宗助の感覚は、私の昭和時代の感覚に極めて近い。

彼の生活はこれほどの余裕にする誇りを感ずるほどに、日曜以外の出入には、落ち付いていられないものであった。

 宗助は、今でいう公務員であるらしい。大きな組織の一員として働く者の余裕のなさが、明治時代から始まっていたことが理解できる。混み合う電車での出退勤、定時の就業時間、毎日曜の休日、そして組織の歯車として働かされている感覚。これらが、日本が近代国家への道を進みはじめた明治時代から、昭和まで続いていたのであろう。
 では、現代はどうなのか。非正規の雇用、シフト制の就業時間、不定期の休日、そしていつ解雇されるかわからないという不安感。明治から昭和まで続いた庶民の労働感覚とは、異なる過酷さがあると感じる。