朝日新聞連載小説『門』夏目漱石第21回2015/10/22

 宗助は、頼りない人だ。
 叔父に任せて、父の遺産を食いつぶされてしまった。遺産の中からの弟の学資を守ってやることもできなかった。さらに、学資がなくなった弟を援助しようという強い気持ちも、その力もなかった。
 もし、宗助が世慣れたしっかり者だったら、父の遺産の処分を抜け目なくやり、なるべく多額の金を相続しただろう。また、父の遺産の一部を弟小六の学資に充てる算段もしただろう。
 そういう人は頼りがいがあるとされる。ただし、それだけのことだ。損得勘定に長けていて、存命中は意見の合わなかった父の遺産で、弟の面倒をみたというだけだ。
 そういう人が、人としてどうなのか。

 一方、頼りない宗助は、子どももいないのに、おもちゃを買って来て、それで遊んでいる。自分が損をして、弟にも迷惑をかけているのに、妻と鉢物を買って来て、安らかに眠る。
 こういう人は、人としてどうなのか。