朝日新聞連載小説『春に散る』沢木耕太郎第104回2015/10/27

 この家がこれから意味をもってきそうだ。
 この事件の真相解明に広岡がかかわってくるとは、さすがに思えない。事件についてはこれ以上発展はしないが、この3年間空き家になっている家と広岡が関係してきそうだ。進藤にしてみれば、この訳ありの家に買い手がつけば、これ以上のことはないだろう。
 この大きな家を、広岡が思っているような場所として使うのであろうか。展開が一段と楽しみだ。

 家には興味がある。
 どうも最近の戸建て住宅の在り様には納得がいかない。外見と新しい設備に重点がかかり過ぎている。
 外から住宅内部への出入りや大型家具などの搬入の容易さ、台所とフロとトイレの使いやすさ、収納と室内移動の合理性などに重点がいくべきだ。また、冷暖房の効率と全ての設備のメンテナンスのし易さも必須だ。
 ところが、それらのことに特徴をもつ住宅建築や販売はないように思う。

 二世帯住宅は、世帯間の独立性がなによりも必要だと思う。ところが、2軒建てるよりは安上がりだということや、別世帯間の共有部分が重視されている。2軒の家を建てるよりも、かえって経費がかかるぐらいの予算で、建築すべきだ。現代の家族構成を考えると、距離的には隣接しているが、世帯間は防音も含めて、完全に独立している造りにしなければ快適性は求められないと思う。