朝日新聞連載小説『春に散る』沢木耕太郎第217回2015/11/10

洗濯機とリネン類の置き場にはアイロン掛けができそうなほどの空間がある。

 人目を引く外観や広い居間や客室がなくても、毎日の生活には困らない。だが、洗濯物を干し、それを整理できるような空間がなくては毎日のようにコインランドリーに行かなければならない。

食器棚や冷蔵庫を置く場所とは別にパントリー、食糧庫まである。

 シンクや調理用のヒーターは、小さめのものでもなんとかなる。だが、米や野菜や調味料類やボトル類を整理して置く所がないと、冷蔵庫はいくつあっても足りなくなる。

 よく考えられている家だ。
 そして、広岡が家のどこに着目しているかが、わかる。