朝日新聞連載小説『門』夏目漱石第41回2015/11/24

 賃金が高いだの安いだの言ってみても、物価によってその価値がたちまち変わるのだ。昭和の後半からは、日本では物価は大きな変動をしていないので、そんな当たり前のことを忘れがちになる。
 そして、庶民には自分の暮らしにすぐに影響の出る金のこと、日常生活上の経済のことは大問題なのだ。話題に事欠いていた御米と小六も、この話題では話が通じ合う。

 学費を出してもらうことも見込みが全くないわけでなく、かといって、確実な当てもない小六は、まさに宙ぶらりんな状態だ。世の中は物価が上がり、裕福ではない兄の家にいては居心地のよいはずがない。
 何かと心配と不平の多い小六と、金にこだわりがなくそのうちなんとかなるだろうという様子の宗助、この兄弟の対比がおもしろい。