朝日新聞連載小説『春に散る』沢木耕太郎第260回2015/12/24

 感謝の気持ちと幸福を感じることに相関関係があるという心理学の説を聞いた。感謝の気持ちを持っている度合いの高い人が、幸福感を感じる度合いが最も高いという実験結果がある、ということだった。才能や、財産や、学歴や、家族構成よりも、感謝の気持ちを持っているかどうかの方が、その人の幸福感に影響するということだ。
 納得のいく話だ。
 
 心の問題ではあるが、感謝の気持ちを常に持ちなさいと諭されても、わかりました、としか答えようがない。
 精神論だけでなく、「ありがとう」と「ごめんなさい」を言う習慣を身につけなさい、と言われれば、行動化できる。

「きちんと礼を言う。きちんと謝る」

 この言葉は、私自身のためにあると思う。