朝日新聞連載小説『門』夏目漱石第60回2015/12/24

 宗助と御米は、互いを他の誰よりも大切な人と思っている。二人は結婚のためにあらゆることを犠牲にしたと思われる。そして、夫婦になった今も、その気持ちは変わらない。夫婦は、気持ちの上ではこの世に二人きりで生きているような感じすらする。
 それなのに、お互いのすべてを分かりあっているかというと、そうはいかないようだ。
 夫婦とは、そういうものなのだろう。