朝日新聞連載小説『春に散る』沢木耕太郎第261回2015/12/25

 世間にははた目も羨むような人の集まりがある。家族であったり、友人同士であったり、恋人同士であったりする。人の集まりに、喜びを感じるととしたらどんな場合だろう。
 仲のよい人、楽しい人、若くて健康な人、年齢は様々だが目的が同じ人、たとえば、そういう人の集まりは喜びを感じるに違いない。
 逆に、人の集まりで、楽しくないとしたら、どんな場合だろう。先に挙げた条件を裏返せばそうなるかもしれない。

 藤原、広岡、佳菜子、この三人の会話は互いに気持ちのよいものだ。この三人の乾杯は、一人一人が喜びを感じている乾杯だ。こんな楽しそうな集まりに、私も加わりたいと思う。