朝日新聞連載小説『春に散る』沢木耕太郎第262回2015/12/26

 この家にとって、佳菜子の存在はますます大きくなっている。家の準備だけでなくて、これからの生活に彼女が欠かせない人になるのではないか。
 藤原が、すんなりとこの家での生活を始めようとしているのは予想外だった。
 元ボクサーのための老人ホームとはいえ、世間一般の老人ホームとは異なるものになるに違いない。いったいどんな共同生活が始まるのか、心配であり、楽しみだ。