朝日新聞連載小説『春に散る』沢木耕太郎第264回2015/12/28

 共同生活の準備がどんどん進む。今まで、はっきりと意識しなかったが、安住の家がない仲間のためだけでなく、広岡自身もこの家に住むことを決めていたのだ。
 この家に、住むということは、アメリカにはもう戻らない。また、日本で別の場所にも行かないことを決めたのだ。それは、広岡がこの家で仲間と共にこれからの時間を過ごすことを意味している。

 自分がこの世にいる限り、自分が暮らしたい家に居る。このことが、今の世の中では難しいことに改めて気づく。