朝日新聞連載小説『門』夏目漱石第71回2016/1/12

 安井は、御米と一緒に住んでいることを隠そうとしていた。しかし、狭い家だし、宗助が来るたびに御米を隠すのは無理がある。そこで、「妹」ということにして、宗助に紹介したのだと思う。
 御米は、そのことはよく心得ているのだから、嘘をついているぎこちなさを見せてもおかしくない。ところが、宗助は、御米にうわべをよそおうような気配などを感じなかった。それどころか、「落ち着いた女」とさえ感じている。
 御米は、宗助が感じた性格を元々持った女性なのであろう。