朝日新聞連載小説『春に散る』沢木耕太郎第282回2016/1/16

 どんな家でどんなメンバーでも、共同生活をするのならなんらかのルールを作ることから始めると思っていた。

かつてジムの会長であった真田が合宿所においてまったく規則を設けなかったように

 こんなことは聞いたことがない。スポーツのための合宿所イコール規則と師弟・上下関係が通り相場なのに。現代のマンションだって、かなり細かなルールがあると聞くのに。

日が経つにつれてそれぞれに少しずつ生活のペースを掴むようになっているようだった

 さりげなく書かれているが、これは新しい提案だ。たとえ、家族だけの生活でも、帰宅が遅い場合やフロの使い方には、ルールが作られ、それを守ることが共同生活に必要だと考えられている。ところが、この男たちは、それをしていないのだ。


 サブタイトルの「新しい人」に期待が膨らむ。