朝日新聞連載小説『門』夏目漱石第78回2016/1/22

 宗助と坂井は、あらゆる点で逆の人物として描かれているように見えた。住まいが崖の上と下であるところからもそれがわかる。しかし、崖の上下ではあるが、二軒の家は目と鼻の先であり地続きである。
 この回ではじめて、世の煩わしさを避けたいと思う坂井の一面が描かれる。一方の宗助は根っからの人嫌いではなかった。

 世間的には成功して金を得た人物と、世間から見捨てられて貧乏な人物とは、大違いのように見えて紙一重の面があると思わせられる。
 これは、一人の人間の生き方に止まらないことなのかもしれない。例えば、国家の発展と衰退も紙一重のものなのだと、漱石は看破しているような気がする。