朝日新聞連載小説『春に散る』沢木耕太郎第290回2016/1/24

 広岡の金を他の三人は羨まなかった。これも、四人の特徴だ。互いに互いの地位や財力を羨んだりけなすようでは、長い間の共同生活が続くはずがない。また、若いころは共同生活ができたとしても、年数を経て、再び一緒に住むことなぞできるはずがない。
 そう考えると、この四人のような関係を持ち続けるというのは滅多に実現できることでないし、想像することすら難しいと感じる。

 新しい客のことが心配だ。この四人の欠点?は、腕に覚えがあるのと理不尽を見逃せないことだから。