朝日新聞連載小説『春に散る』沢木耕太郎第296回2016/1/30

「これから何をしたらいいんだろうな……」

 その通りだと頷いてしまう。
 目指していたこと、目指していたこととは違うがしなければならなかったこと、それらのことから離れて、もつ思いが、まさにこれだ。
 もっとも、こう思えるのは、

住むところができたから

なのだ。だから、こう思える人は、恵まれていると言える。

 佐瀬には、目的があった。目的である野菜作りの知識と経験を持っていた。
 ある年齢を過ぎると未経験のことをはじめても成果は上がらないと、私は思う。