朝日新聞連載小説『春に散る』沢木耕太郎第314回2016/2/18

 星は、パンチが鋭いが、言葉も鋭い。星が問い詰めるように発した言葉から、若者が事情を話し始めた。
 そして、星が肝心のことを訊いた。

「おまえ、本当にプロなのか?」

 プロだとすると、今回の暴力沙汰は徹底して隠すか、広岡が一方的に暴力を振るったと嘘をつかなければならないだろう。それよりも、チンピラ風と一緒だったというだけでもまずいのではないか。
 プロを目指している段階だとするなら、今回路上で殴り合ったことが、表沙汰にならなければ、なんとかやり直しが効くのではないか。

 四人の行動と言葉が、ここでも見事にかみ合っている。