朝日新聞連載小説『春に散る』沢木耕太郎第316回2016/2/20

その思いがけない展開に、広岡たち四人は、なんとなく顔を見合わせて、息をついたり、苦笑したりした。

 夕方から飲みに出かけた五人の一日がようやく終わろうとしている。厄介事に巻き込まれ、それに仲間で取り組んで、なんとか片付けた。四人の男たちのやり終えた安堵と快い疲労が、伝わってくる。
 挿絵の時計も効果的にそれを示している。


 藤原と星と佐瀬がそれぞれの考えを言い、広岡がそれを括って結論を出す。この物事の決め方をちょっと変えてしまったのが、佳菜子だった。広岡は、自分が送ってでも彼女を帰そうと思っていたのではないか。