朝日新聞連載小説『門』夏目漱石第92回2016/2/12

彼は悟りという美名に欺かれて、彼の平生に似合わぬ冒険を試みようと企てたのである。そうして、もしこの冒険に成功すれば、今の不安な不定な弱々しい自分を救う事が出来はしまいかと、果敢ない望みを抱いたのである

 これから宗助は座禅を始めようとしている。その場面で、宗助の企てが成功しないことが、表現されている。それは、作者の視点からの表現であるが、同時に、宗助も自覚したのであろう。
 宗助は、山寺を逃げ出すことはしなかったが、座禅を早々に止めて、サッサと寝てしまった。