朝日新聞連載小説『春に散る』沢木耕太郎第323回2016/2/27

日中は広岡だけがチャンプの家にひとりポツンと取り残されることが少なくなかった。

 広岡は、チャンプの家を準備して、四人の共同生活が軌道に乗れば、することがないのだ。

 人にとって、やりたくもないことをしなければならないのは辛いことだ。同時に、何かをしたいのにすることがないのも辛いことだ。特に老人にとっては、後者の方がより苦しい場合もある。
 チャンプの家は、ある種の老人ホームだが、そこから出かける用事のある人がいるのは、現実の老人ホームと違う点だ。

 若い二人は、チャンプの家にいるのかいないのか、明らかになっていない。この回を読む限りは、二人の姿は見えないのだが‥‥