朝日新聞連載小説『春に散る』沢木耕太郎第325回2016/2/29

 チャンプの家の暮らしが落ち着き始めた。
 改めて、疑問に思う。広岡は、なぜこの家を準備したのか。

○ アメリカで孤独のまま余生を過ごしたくなかったから。
○ 病気になり、故郷と思える所が懐かしくなったから。
○ 三人の状態を知り、気の毒で見過ごしにできなかったから。
○ 真拳ジムと昔の仲間に恩返しをしたかったから。
○ プロボクサーの現役後の生活に役立つ活動をしたかったから。

 上のどれでもないような気がする。上の理由だけだったら、チャンプの家で四人の共同生活を続けなくともよいと思える。
 チャンプの家は、元ボクサー四人の終の棲家だけの存在であってほしくないという気持ちになる。