朝日新聞連載小説『門』夏目漱石第98回2016/2/24

 宗助は、講者から修行に対する自分の不心得を叱られたと感じている。感じているだけでなく、実際にそうなのだろう。
 座禅には相変わらず身が入らないが、講者からの話には興味を持っている。

 この寺に来てからも宗助の心が、修行で落ち着くことはなかった。しかし、寺に来る前のような居たたまれないほどの不安に脅かされてはいない。修行に真剣に取り組めないことを悩んでいるので、安井についての不安と罪の意識からは離れていられるのだろう。